公益財団法人中山隼雄科学技術文化財団 公益財団法人中山隼雄科学技術文化財団

特集

特別対談 2022

写真:苗村健

苗村 健 東京大学大学院 情報学環 教授

1969年生まれ。東京都出身。
2006年日本バーチャルリアリティ学会にアート&エンタテインメント研究委員会を設立。2019年電子情報通信学会ヒューマンコミュニケーショングループ運営委員長。文部科学大臣表彰若手科学者賞、経産省Innovative Technologies、グッドデザイン賞など受賞多数。

写真:中山 晴喜

中山 晴喜理事長

1964年生まれ。東京都出身。
1997年(株)マーベラスエンターテイメント(現(株)マーベラス)を設立。
現在は(株)アミューズキャピタル代表取締役会長。(株)アミューズキャピタルインベストメント代表取締役。

意欲ある学生が「あそび」に楽しく真剣に向き合う場所

東京大学のプロジェクト中山未来ファクトリーは、どのような取り組みでしょうか。

苗村 中山隼雄氏のご寄付によって2017年4月に竣工した施設「東京大学情報学環オープンスタジオ」を拠点として活動する、「人間と遊び」をキーワードにしたプロジェクトです。

中山 寄付をさせていただいた理由の一つに、エンターテインメント業界に長く携わる者として、業界に恩返しをしたいという気持ちもありました。
学校に設置したことで、利益を生み出すことから離れ、より自由な研究環境を整えられたと思います。

今までどのような活動をされてきたのでしょうか?

苗村 初めは、文京区の小学生たちを招待して行ったプログラミングのワークショップを開催していました。その後、大学生にも自由な発想で取り組める機会をというニーズから、大学生を対象としたハッカソン「あそびの未来ファクトリー」を企画。あそびをテーマにアイディアを出し合い、大学提供の機材で実際に形にするイベントを行いました。
 何度か開催してみると、学生たちは非常にアイディアに溢れていながら、アイディアを説明するのが苦手なことに気がつきました。そこで、アイディアの言語化やエンターテインメントの背景知識などを網羅したゲームデザイン論の講義も実施。講義は大人気で、受講した学生による授業評価でも満足度が高かったですね。

中山 「あそびの未来ファクトリー」は、単位非算入の授業にもかかわらず、毎年多くの参加希望者がいると伺っています。毎回おもしろい作品が生 まれていますし、今後の展開にも期待しています。受講者たちからクリエイティブ気質を感じますね。限られた時間と空間で様々な思案を巡らし、個性的な作品を産み出す受講生の力にも可能性を感じています。

中山未来ファクトリーにやってくる学生たちの特徴は?

苗村 みんな非常に能動的で、自分が好きなことに躊躇なく取り組めている印象です。理系・文系、男女のバランスもよく、本プログラムの「あそびをデザインする」という切り口が、性別や学部に関係なく関心を抱くきっかけになっていると思います。

エンターテインメント業界30年への想いと、「おもしろさ」を問い直す視点

中山隼雄科学技術文化財団としての活動の想いをお聞かせください。

中山 当財団は「人間と遊び」という視点に立った科学技術の調査研究、研究開発等へ、この四半世紀の間に総額15億円を超えての助成を行い、よ り広く社会文化の発展と人類の福祉の推進に貢献してきました。エンターテインメント業界を盛り上げていきたいという思いも込めて、今後も積極的に助成を行っていきます。

ゲームやエンターテインメントにまつわる業界の状況は、30年間でどのように変化してきましたか?

中山 30年前はゲームのハードウェア・ソフトウェアともに日本が世界を牽引していました。しかし今では、欧米や中国の企業が市場を席巻しています。また、スマートフォンやダウンロード版のソフトの普及によって、オンラインを中心に、多様なあそびが展開されるようになったと思います。
 一方で、ゲーム作りが資金競争になっていることに危機感を覚えます。たくさんお金を費やしても、それがおもしろさに直結するわけではありません。制作資金で変えられるのはあそびの提供の仕方や表現方法であり、あそびの本質とは異なるからです。今一度、おもしろさの本質を問い直す必要があると思います。

国内エンターテインメント業界が今後伸ばしていくべきところはどのような部分でしょうか?

苗村 あそびの中心にある楽しみや喜びといった感覚は文化と結びついているわけですから、過去の文化や歴史にも着目していくとおもしろいかも しれません。
 また、世界にもっとも先駆けて超高齢社会になった日本では、高齢者も楽しめるエンターテインメントをいち早く提案できると思います。世界市場を目指すのとは違う視点から、新たなあそびを生み出せるのではないでしょうか。

中山 これからデジタル技術が広がるほど、舞台やライブ、レコードなどアナログのエンターテインメントの需要が高まると思います。これから社会に出ていく学生たちはデジタル社会で生まれ育った分、双方の良さを知りながらエンターテインメントを突き詰められるのではないでしょうか。

教育を通して、国策規模で業界を盛り上げる社会へ

中山隼雄科学技術文化財団として、これからの10年で取り組みたいことを教えてください。

中山 我が国の科学技術を、さらに「あそび」をキー ワードとする新しい文化のパラダイムへと昇華させ、 コロナ後の社会を心身ともに健康で豊かで活力あ る社会として発展できるように努力していきたい と思います。
 今の時代のおもしろそうなものを少しでも早く 見つけて、積極的に助成させていただき、世の中 に発信する。その地道な取り組みから、新たなエ ンターテインメントビジネスが生まれるきっかけ を作ることができればと思います。

中山未来ファクトリーとしては、今後どのような活動をお考えですか?

苗村 子供たちが社会に出るまで、できるだけ長 期的にゲームの世界やエンターテインメントにつ いての教育活動をしていきたいと思います。一般 教養のひとつとしてエンターテインメントの知識 を育んだ人材が、国会や行政に関われるような状 態を目指し、国策規模でエンターテインメント業 界を盛り上げられたらと思います。

中山隼雄科学技術文化財団として、今後の中山未来ファクトリーに期待することはありますか?

中山 クリエイティブ人材たちがその力を最大限 発揮し、いろいろなものを考え産み出して成長し ていけるよう、中山未来ファクトリーを更に積極 的に活用していただきたいですね。
 また、これからさらにネットワークゲームのユー ザーが増え、世界中の人々が同じ空間でエンター テインメントを楽しむことが当たり前の世界になっ ていくと思います。そんな未来のなかで、日本発 のおもしろいエンターテインメントをどんどん発 信できるよう、若い皆様のクリエイティブとご活 躍を期待しております。

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